ソウルオリンピックの時の話である。イギリスの動物愛護協会が「犬の肉を食べるような国へ選手を派遣するな」と、かみついたことがあった。これに対して、韓国側はどう反応したか。犬の肉を食べるのは、我が国固有のものであり、文句を言われる筋合いはないと反論はしたが、結局、犬の肉を食べさせる食堂に対して、政府が「犬の肉を出してはいけない」という指導を行って、ソウルオリンピックは無事に終わった。
韓国には犬の肉を食べる習慣がある。特に、中年以上の男性に人気が高く、現在でも決して多くはないが、そういう食堂がある。女性の場合は、私の知る限りでは、犬の肉を食べることを嫌っている人が多い。韓国全体でも、野蛮なことだ、悪い習慣だと考えている人の方が多いだろう。
しかし、よくよく考えて見ると、おかしな話である。他国の人間が、どうしてその国の人が食べる物に文句をつけるのだろうか。例えば、日本人は「さしみ」という生の魚の肉を食べるが、「生の肉を食べるような国へ選手を派遣するな」と言われたら日本人はどんな反応をするのだろうか。きっと、みんな怒るだろう。
韓国人は別にイギリスの動物愛護協会の人に、犬の肉を食べろと言っているのではない。オリンピック選手村の食堂で犬の肉を出すのでもない。イギリス人が文句をつける理由はどこにもない。一部の韓国人が犬の肉を食べるのは事実だし、変なことでもなんでもない。イギリス人が牛や豚の肉を食べるのと同じである。ただ、犬が身近な動物であり、彼らの世界では犬は「食料」のための動物ではないということだけである。見方を変えれば、どの国民も皆変なものを食べているのである。他人がうまいと思って食べているものに、文句を言う権利はだれも持っていない。
問:本文の要点を簡潔にまとめた文はどれですか。
1.犬の肉を食べることは、あまりいい習慣ではない。また、犬と牛や豚や魚を同じ食料と
考えるのはおかしい。犬は身近な動物で、多くの人は犬を食料とは考えない。だから、
イギリス人が文句をつけるのは当然である。
2.確かにどの国の人も皆変なものを食べているのである。自分たちが食べているものだけ
が普通だと考えるのはいけないことだが、やはり、犬の肉を食べるのは認められないし、
野蛮なことだと思う。
3.韓国人はイギリス人に犬の肉を食べろと言っているのではない。だから、イギリス人の
文句は間違っている。他人が普通に食べているものに対して、だれも文句を言うことは
できない。
4.犬の肉を食べるなという理由は、確かにどこにもない。だが、韓国人の中にも犬の肉を
食べることに反対する人は多いのだから、イギリス人の言うように、犬の肉はやめた方
がいいだろう。
今から27年も前のことであるが、ミュンヘンでオリンピックが開かれたことがある。その時もアメリカ人選手の大活躍で、水泳競技はアメリカの圧勝だった。
そのアメリカの水泳選手の中に、マーク?スピッツという選手がいた。金メダルを七つとった選手である。私がこの選手の名前をよく覚えているのは、もちろん金メダルの数が多かったからであるが、決してそれだけではない。この選手は実は医学部の学生だったのである。オリンピックの終了後、彼はインタビューに答えてこう言った。「オリンピックの後は、また大学に戻って、医学の勉強を続けます」と。私はびっくりした。医学部と水泳のオリンピック選手が結びつかなかったからである。
医学部というのは普通、大学の学部の中では最も難しいところである。つまり、秀才が集まるところである。その秀才がオリンピックで金メダルをとったのである。こんなことはたぶん日本では起こらないだろう。
悲しいことだが、日本では勉強のできる学生と運動のできる学生を区別する傾向がある。例外はあるが、勉強のできる学生がいい学生で、勉強のできない学生が、運動をするという考え方が根強くある。勉強のできる学生は、法律や経済を勉強して、弁護士や裁判官、政治家、一流企業の幹部になろうとする。医者、作家、音楽家、画家、教師などもこれに含まれるだろう。言葉を変えれば、頭を使う専門家と言ってもいい。彼らは社会の中で、尊敬を受ける。
一方、野球、相撲、サッカーなどの専門家は、頭を使う専門家と同じぐらい厳しい訓練を続け、一流のプロになるのだが、それでも、頭を使う専門家ほどは尊敬されない。もちろん、軽蔑されることはないが、より低く見られる傾向はある。
つまり、「勉強ができる学生」「勉強ができないから運動をする学生」というように、学生を「勉強ができるか、できないか」で分けてしまう風潮が日本社会には確かにある。だから、医学部の学生が水泳のオリンピック選手になって金メダルをとったことに驚いてしまったのである。
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